はじめに
「その光は、作品を傷めませんか」
文化財を3Dで記録する仕事をしていれば、いつか必ずこれを聞かれる。そして私は、長いあいだ自信を持って答えられずにいた。
機材メーカーは「安全です」と言う。だがそれは根拠ではなく、立場の表明だ。学芸員に同じ言葉を返したところで、通るはずがない。
だから調べることにした。始めたときは、答えは書かれているはずだと思っていた。国宝や重要文化財の制度がこれだけ整備された国なのだから、撮影時の照度の上限くらいは定められているだろう、と。
そうではなかった。
国は、撮影の光について数値を定めていない。そして調べていくと、それは抜け落ちているのではなく、別の形で判断されているからだと分かってきた。
そしてもうひとつ、調べていくうちに論点が思っていた場所になかったと分かった。文化財と光といえば、まず退色である。照度と時間を掛けた累積露光量で管理する——保存科学の基本であり、展示についてはよく整備されている。だが撮影と3D計測で警戒すべきなのは、退色ではなく熱のほうだった。
以下は、一次資料に当たって分かったことの記録である。
そもそも、光を当てずに済むのか
本題に入る前に、ひとつ整理しておきたい。この問いを立てる前提そのものに関わるからだ。
3Dで記録する方法は、まず対象に触れるかどうかで分かれる。
触れる方法——型取りしてレプリカを作る、接触プローブ(三次元測定機)で表面をなぞる——は、光を一切使わない。光の問いに対する最も直接的な答えであり、形を写すという目的だけを見れば、今でも有効な手段だ。
だが文化財では、この選択肢がしばしば最初に外れる。触れること自体がリスクだからだ。型取りなら離型剤や樹脂が表面に残る可能性があり、プローブなら微小とはいえ接触圧がかかる。のちに詳しく見るフランスの3D計測論文27にも「型取りするには脆すぎる複合的な資料」という記述がある。触れないという判断が先にあって、そこから非接触の方法が選ばれている。
そして非接触の方法は、光との関わり方で二つに分かれる。触れずに形を知るには、対象から返ってくる光を読むしかないからだ。ここで初めて、光の軸が立ち上がる。
構造化光スキャナやレーザースキャナは能動的だ。自ら光を放ち、対象に当たって返ってきた光を読んで測る。縞模様や線を投影し、返ってきた像のずれから三角測量で距離を出すもの。光を出してから戻るまでの時間や位相のずれを測るもの。方式はいくつかあるが、いずれも自分が出した光が返ってこなければ、何も測れない。光を当てないという選択肢が、原理的に存在しない。
一方でフォトグラメトリは受動的だ。反射した光を読んでいる点は同じだが、その光を用意するのは自分ではない。そこにある光で撮るだけなので、原理の上では、展示照明のままでも成立する。
だから「文化財を3D化するには光を当てなければならない」とは言えない。当てずに済む方法はある。触れる方法なら光はゼロだし、フォトグラメトリなら光を足さずに済ませられる。
それでも実際には、光を当てる方法が選ばれる。触れる方法は「触れない」という判断で先に外れ、残った非接触のうち能動型は光を出さなければ成立しない。そしてフォトグラメトリでも、たいてい光を足す。形の再現性を上げるため、暗部の情報を出すため、色を正しく写すため、シャッター速度を確保するため。展示照明のままで撮れば、記録の質はそのぶん落ちる。光を足すのは必然ではなく、品質のための選択だ。
選択であるなら、根拠が要る。
国は、撮影の数値基準を持っていない
文化財の取扱いについて、国がまとまった指針を出している文書がある。文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」だ。平成8年の文化庁長官裁定にはじまり、直近では令和5年6月16日に改訂されている1。
この要項は、展示については具体的な数値を持っている。
| 項目 | 規定 |
|---|---|
| 照度の原則 | 150ルクス以下 |
| 漆工品・甲冑 / 書跡・典籍 | 100ルクス以下 |
| 染織品 | 80ルクス以下 |
| 近代洋紙 | 50ルクス以下 |
| 温度 / 相対湿度 | 22℃ ± 1℃ / 55% ± 5% |
材質ごとに上限が書き分けられている。光に弱いものほど数字が小さい。妥当で、明快だ。
ところが、撮影に触れている箇所を探すと、要項の中にはこの一文しかない。
写真や動画撮影に使用する照明についても、照度や露光時間については十分留意すること。
文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」5(4)④ 1
数値がない。「十分留意すること」で終わっている。
ここで「累積露光量で計算すればいいのでは」と思う人もいると思う。照度と時間を掛けた総量で管理するのは、保存科学の基本的な枠組みだからだ。だが要項からは、それが出てこない。
要項が持っている数値は、照度の上限と公開日数の上限の二種類だけである。「積算」「累積」「ルクス時」といった語は一度も出てこない。そして一日あたりの公開時間が定められていないため、この二つを掛けても累積露光量にはならない。版画は「年間延べ30日以内で照度は50ルクス以下」と書かれているが、その30日が一日3時間なのか8時間なのかは、どこにも書かれていない。「年間◯◯ lx·h」という形の管理は、要項の外にある枠組みだ。
もっとも、考え方そのものが無いわけではない。同じ(4)の①には、こう書かれている。
特にたい色や材質の劣化の危険性が高い重要文化財等については、露光時間を勘案して照度をさらに低く保つこと
文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」5(4)① 1
照度と時間を掛けて考えろ、と言っている。数値にしていないだけだ。
そして、ここが効いてくる。①(展示)と④(撮影)は、同じ構文で書かれている。どちらも「照度と露光時間に配慮せよ」としか言っていない。違うのは、①には照度の具体値が別に定められていて、④には何も無いことだけである。
つまり撮影の数値が抜け落ちているのではない。同じ論点を掲げたまま、数値を置かずに済ませている。そう読むほうが実態に近い。
もっとも、熱の論点自体は消えていない。同じ(4)の②には「白熱灯を使用する場合には、熱線(発熱)の影響を避けるよう配慮する」とある。問題として認識はされているが、数値では示されていない——それが現在の状態だ。紫外線も同じで、徳島県立博物館の研究報告(2025)は要項について「紫外線については、具体的な数値基準は示されていない」と明記している2。
もうひとつ、見落としやすい点がある。要項の前文は、適用範囲を「所有者及び管理団体以外の者が移動を伴い、重要文化財等が通常保管されている施設以外の施設において公開を行う」場合と明示している。本体が想定しているのは「他館へ貸し出して展示する」場面だ。前文には続きがあり、所有者が自館で公開する際にも「適切な展示・公開条件を策定してその条件に従うか、若しくはこの要項に定める事項に基づく」ことが期待される、とされている。数値だけを引いて「国の基準です」と言うと、適用範囲を知っている学芸員にはすぐ見抜かれる。そしてここも「公開する際」であって、撮影ではない。
数値の読み方にも注意が要る。要項は材質によって「年間延べ150日以内」という公開日数の制限を課しているが、この制限の趣旨は光による劣化そのものではなく、移動・温湿度の変動・き損・警備といったリスクの管理にあると解される。だとすれば、移動を伴わない館内での撮影は、この制限の趣旨からも外れることになる。「150日以内と書いてあるので撮影は年◯日まで」という読み方は、二重に的を外している。
⚠️ ここは断っておきたい。これは「調べた範囲で見つからなかった」という報告である。確認したのは文化庁が公開している取扱要項1と、公開承認施設の承認に関する規程(平成8年 文化庁告示第9号。こちらも撮影・照明の数値は持たず、照度は「適切な保存環境を維持できる設備を有すること」という施設要件として現れるだけだった)、および第53条・第43条まわりの案内である。国のあらゆる通知・事務連絡まで悉皆で当たったわけではない。「どこにも無い」は本来証明できないことで、言えるのは「主要な指針を読んだが、無かった」までだ。もしどこかに数値があるなら、教えてほしい。こちらの探し方が足りなかっただけなら、そのほうが話は早い。
⚠️ 検索で最初に出てくるPDFが、最新版とは限らない
この要項を探したとき、検索上位に出てきたPDFは平成30年1月改訂版だった。実際には二回分古い。同じ文書が複数の場所に置かれ、更新のタイミングが揃っていないためだ。新旧を全文比較したところ実質的な差は所管課名の表記だけで、数値も条項も同一だった。今回は結論が変わらなかったが、それは運が良かっただけである。行政文書を引くときは、改訂日の行を必ず読むこと。
では、何が判断しているのか
基準が見つからないので、探し方を変えた。「基準はどこにあるか」ではなく「実際には誰がどう判断しているのか」を調べた。すると、日本の運用が二つの層で動いていることが見えてきた。
| 層 | 誰が判断するか |
|---|---|
| ① 制度・手続きの層 — 文化財保護法 第43条・第53条を軸に、許可申請が要るかどうかを決める | 文化庁 |
| ② リスク便益判断の層 — 「調査目的の重要性」と「資料への影響」を案件ごとに秤にかける | 館・研究機関の学芸員、保存科学者 |
可視光での撮影や3D計測は、この枠組みの中で最も低リスク側に置かれ、事実上「観覧・記録」の手続きに吸収される。だから独立した安全数値を持たない。
基準が抜け落ちているのではない。②の個別判断に委ねられているから、数値の形で存在しないのだ。
これが分かったとき、探し方が間違っていたことに気づいた。私は「守るべき数値」を探していたが、必要なのは「②の判断をする人に渡す材料」だった。
しかもその判断は、独立した審査委員会という形をとらないのが一般的だという。資料を読むのは組織ではなく、名前と顔のある一人の担当者だ。その人が自分の名前で「大丈夫だ」と判断することになる。
そしてここには、最初は見えていなかった含意がある。国の許可が要らないなら話は簡単だ——と思っていたが、逆だった。許可が要らないということは、判断が館の中に閉じるということだ。館は「文化庁が認めたから」と言えない。責任の所在を外部に移せないぶん、担当者にとってはむしろ重い。だから資料が要る。「許可してください」と頼む文書ではなく、判断材料を提供する文書として。
法律は、どこまで関わってくるのか
第53条(公開の許可)
文化庁の該当ページには、こう書かれている。
重要文化財の所有者及び管理団体以外の者がその主催する展覧会その他の催しにおいて重要文化財を公衆の観覧に供しようとするときは、文化庁長官の許可を受ける必要があります(法第53条)
文化庁「重要文化財の公開の許可について」 3
撮影・3D計測は「公衆の観覧に供する」行為ではない。さらに館が実施主体であれば「所有者及び管理団体以外の者」にも当たらない。二重に該当しない。そして同じページには、撮影・調査・計測に関する記述が一切ない。
第43条(現状変更の許可)
残る論点はこちらだった。対象は「現状を変更し、又は保存に影響を及ぼす行為」。非接触の撮影は物理的な変更を加えないが、「保存に影響を及ぼす行為」の解釈が問題になる。
答えは意外なところにあった。文化庁「高松塚古墳壁画の保存活用検討会」ワーキンググループの資料(2016)である。非破壊調査の手法を並べた表の中に、こう書かれている。
国宝,特別史跡に影響を与えるおそれがある。(サンプリング調査の際には現状変更の手続きが必要。)
文化庁 高松塚古墳壁画の保存活用検討会 ワーキンググループ 資料6-2 4
括弧書きで「サンプリング調査の際には」と限定されている。裏返せば、非破壊調査には現状変更の手続きを要さないという運用が、文化庁自身の公開資料から読み取れる。実際、高松塚古墳壁画の非破壊調査は現状変更手続きなしで実施され、サンプリング(破壊型)のみが手続きの対象として整理されている。
国宝かつ特別史跡という最高ランクの文化財ですら、非破壊調査は現状変更の手続きなしに実施されている。
同じ資料が挙げる非破壊調査9手法は、①デジタルカメラによる観察・撮影 ②デジタル顕微鏡 ③紫外線を用いた観察 ④赤外線を用いた観察 ⑤X線透過撮影 ⑥X線CT撮影 ⑦蛍光X線分析 ⑧紫外・可視分光分析 ⑨蛍光分光分析。2016年の壁画向け資料なので3D計測は入っていないが、①の延長にあることは明らかだ。
そしてこの並びを見て気づくことがある。文化財に対しては、可視光よりはるかにエネルギーの高いものが、すでに日常的に照射されている。紫外線を意図的に当てる紫外線蛍光撮影は、補彩や修理箇所を検出する標準手法だ。ここから読み取れる判断の作法は、(a)破壊調査の可否を峻別する →(b)非破壊調査を第一選択とする →(c)非破壊で判明しないことについてのみサンプリングを検討する、という順序になっている。
より侵襲的な調査は、すでに日常的に行われている
この9手法を眺めていて、論点の置き場所が違っていたことに気づいた。文化財に何かを照射して調べるという行為自体は、まったく新しいことではない。
| 手法 | 照射するもの | 用途 |
|---|---|---|
| X線CT / X線透過撮影 | 電離放射線 | 内部構造、絵画の下層。国内の博物館・研究機関に専用の装置がある |
| 中性子ラジオグラフィ | 中性子線 | 刀剣などの内部調査 |
| 紫外線蛍光撮影(UVF) | 紫外線 | 補彩・修理箇所の検出。標準手法 |
| 赤外線反射撮影(IRR) | 赤外線 | 下描き・墨書の検出。標準手法 |
| 蛍光X線分析(XRF) | X線 | 顔料・材質の非破壊分析 |
⚠️ 上表は、先の9手法4のうち照射をともなうものを「何を当てるか」で並べ替えたものである。ただし中性子ラジオグラフィは9手法に含まれておらず、こちらで補った。この手法と、各手法の国内での普及状況については、本稿では一次資料を確認していない。
とくに紫外線蛍光撮影が示唆的だ。みんなが心配するまさにその波長を意図的に当てているのに、標準的な調査法として確立している。それが標準なら、可視光による3D計測は当然その内側にある。
⚠️ この比較は、使い方を間違えると逆効果になる
「CTもやっているのだから、光ぐらい平気でしょう」——これは最悪の論法だ。まず、判断する相手に対して「よそもやっている」は通らない。
さらに悪いことに、X線には線量管理の確立した基準がある。基準のあるものと無いものを一緒にするな、と返されて終わる。座組も違う。X線CTは館が主体となって専門機関が実施するもので、外部の事業者が機材を持ち込む話とは前提が異なる。
使えるのは位置づけを示すところまでだ。「文化財に光や放射線を当てて調べることは、保存科学において確立した実務です。本件の可視光は、その中で最もエネルギーが低い部類にあたります」——順序と便益の話に留め、免罪符には使わない。
学会も「非破壊が原則」と言っている
同じ方向を、学会も明言していた。日本文化財科学会が2019年6月24日に出した声明である。
これらの目的による文化財の科学調査は「非破壊調査」が原則です。サンプリングなどの「破壊調査」を行う場合は…所有者に対して①必要性・正当性を提案し、②承諾を得て、③調査・分析の方法・結果を記録し、④それを所有者に報告し、⑤結果の公開などを経て論文等に使用することが基本です。さらに、⑥分析に用いた試料やデータは再検証できるように可能な限り保管・管理することが求められます。
日本文化財科学会『文化財の科学調査に伴う手続きの重要性について』2019年6月24日 5
厳格な①〜⑥が課されているのは破壊調査に対してであって、非破壊の記録ではない。3D計測は完全非接触・非破壊なので、例外を求める側ではなく、原則に沿う側にいることになる。
もっとも、これは「だから何もしなくていい」という話ではないと考えている。①〜⑥は非破壊であっても踏襲できる。必要性を示し、承諾を得て、方法と結果を記録し、所有者に報告し、データを保管する。求められている以上のことを自分から引き受けるほうが、結果的に話は早い。
3D計測は、すでに制度上のカテゴリになっている
もうひとつ心強い発見があった。奈良文化財研究所の「特別観覧」の申請案内に、対象となる行為が列挙されている。
静止画像撮影(写真、マイクロフィルム)、動画撮影、三次元画像計測、熟覧、模写・模造などを含みます
奈良文化財研究所「特別観覧について」 6
国の研究機関が、三次元画像計測を制度上の一カテゴリとして正式に扱っている。撮影の30日以上前に申請し、使用目的によっては料金も発生する。「3D計測は新しすぎて手続きの枠組みがない」わけではない。ただし、この手続きが扱うのは所有権・管理・利用の枠であって、保存科学的な安全審査ではない。制度に乗ることと、光の安全を説明することは別の仕事だ。
⚠️ それでも「許可は不要です」とは言わない
ここまでの読みは一次資料に基づいている。だが判断するのは所有者であって、私ではない。資料を渡すときの立て付けは「不要です」ではなく「調べた結果こう読めます」でなければならない。迷いが残るなら、館から文化庁へ照会してもらうのが正しい順序だ。
また、これは非接触・非破壊であることを前提とした読みである。作品に触れる、動かす、仮設の台や足場を組む——そのいずれかが入るなら、話は別に立て直す必要がある。
数値は、どこから来ているのか
要項に無いのなら、現場で使われている「年間◯◯ lx·h」はどこから来ているのか。ここを辿ると、日本の文化財照明がどういう積み重ねの上に立っているかが見えてくる。
これは私の読みではない。東京文化財研究所で長く保存科学に携わった佐野千絵が、2023年の論文ではっきりそう書いている21。
積算照度の考えは盛り込んでいないが、展示期間と照度の最大値から1日の点灯時間を9時〜17時の8時間とした場合の、積算照度の1年あたりの最大値を計算しTable 3に記載した
佐野千絵「文化財保護分野における照明研究の歴史」(2023) 21
そして同じ表の注記には、「積算照度は、筆者が要項を読み解き算出したもの」とある。要項に載っている数値ではなく、著者が仮定を置いて計算した値だと、わざわざ断ってある。一日8時間という前提も、要項ではなく佐野が置いたものだ。
では lx·h の枠組みはどこから来ているのか。国際照明委員会の CIE 157:2004である。これを踏まえて、日本照明学会が2021年に「美術館・博物館の照明技術指針」(JIEG-012:2021)を策定している22。
CIE 157: 2004 Control of Damage to Museum Objects by Optical Radiation に則って、展示物の材料を光への応答度に応じて4分類し、それぞれに応じた制限照度[lx]と限界露光量[lx•h]を規定している
吉澤望「美術館・博物館の照明技術指針について」(2022) 22
系譜がはっきりした。lx·h の数値は CIE から照明学会へ流れてきたもので、文化庁の要項はその流れに乗っていない。どちらも「国の基準」ではない——照明学会は一般社団法人、CIEは国際機関である。検索で出てくる「年間15,000 lx·h」のような数字を「文化庁の基準です」と説明すると、そこで間違える。
⚠️ 佐野は、しばしば引かれるもうひとつの規格についても釘を刺している。JIS Z 9110:2010 は「人々の諸活動が安全、容易かつ快適に行えるための照明設計基準」であって、資料の安全のための基準ではない——そして要項に比べて大きな値である、と21。
ではその照明学会の数値は、どうやって決まっているのか。指針の幹事を務めた吉澤望が、そのまま書いている22。
現状の照度の推奨範囲は、50lx はないと見えないし、200lx を超えると今度は劇的に見えが良くなるわけではないという実験結果や経験値をもとに定められていると言って良いだろう
吉澤望 (2022) 22
損傷の閾値から逆算した値ではない。「これ以下では見えない」と「これ以上明るくしても見え方は変わらない」の間を取った、実務上の落としどころである。数値があるからといって、そこに物理的な境界があるわけではない。この性質は、自分で基準を立てるときに効いてくる——後で戻ってくる。
同じことを、東京文化財研究所の側からも書いている人がいる。吉田直人(2018)である24。
最も脆弱な種類の資料に50ルクスが提示されているのは、さらに低照度では、鑑賞性が著しく損なわれるからであり、基準は保存の観点のみから定められているのではなく、活用[の観点も含む]
吉田直人「白色LED照明の展示照明への普及」(2018) 24
そして、もっと大事なことも書いてある。
照度基準、積算照度基準は光による劣化を完全に抑止することを意味するものではない。完全な遮光でない限り、低照度ほど劣化の進行は遅くなるのみである。
吉田直人 (2018) 24
基準を守れば劣化しない、ではない。遅くなるだけである。これは基準の性格を根本から決める一文で、「基準内なので安全です」という言い方が、なぜ成り立たないのかを説明している。光を当てる以上、進行は止まらない。だから「どれだけ当てたか」を記録して所有者に渡す、という発想になる。
⚠️ この技術指針(JIEG-012:2021)と CIE 157:2004 は、いずれも原典を入手していない23。前者はCD-ROM版のみの刊行で、上の記述はどちらも佐野(2023)と吉澤(2022)という二次的な紹介による。数値そのものを人に示す段になったら、原典を取る。
そして⚠️ ひとつ、気になっていることがある。吉澤によれば、この技術指針の第3章には「光化学作用・光熱作用の影響をどのように考えれば良いのか」という解説が置かれているという。光熱作用——熱である。本稿がこれから扱う論点に、照明学会の指針が触れている可能性がある。未入手なので、確認できていない。
半世紀前の日本の測り方が、いまの国際指針に載っている
制度の側が片付いたので、保存科学の側を調べた。日本語で、しかも撮影の照明を正面から扱った文献が一本あった。登石健三・石川陸郎「文化財撮影時の照明に対する安全についての考察」『保存科学』第5号 pp.35-48、1969年。東京国立文化財研究所の紀要である7。
読んでみると、この論文は二つの独立した話をしていて、その二つは賞味期限がまったく違った。前半(2章)は光化学的損傷で、ストロボによる褪色リスクを1954年の damage 曲線から換算している。分光測定や微小色差の測定精度が現在と桁違いなので、そのまま引くと現行の知見と食い違う。後半(3章)は熱による損傷で、熱線 → 表面温度の上昇 → 局所的な相対湿度の低下 → 乾燥収縮・剥離・そり返り、という筋道を扱っている。こちらは空気線図に立脚した物理であり、測定技術の進歩に影響されない。
「1969年の論文だからLEDが存在しない。だから今の3Dスキャナには当てはまらない」——最初はそう考えていた。褪色についてはその通りだ。だが熱については誤りだった。熱線を出す光源であれば、光源の種類は関係ない。
後半から取り出せる数値は、次のものだ。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 被写体の表面温度上昇 | 1.5℃以下 |
| 照度計しか使えない場合の代用値 | 700ルクス |
| 撮影環境の相対湿度 | 50%以上(下回るなら加湿するか、日を改める) |
| 許容される表面付近の相対湿度低下 | 環境の1割まで。かつ40%を割らない |
700ルクスという数字には実測の裏づけがある。そり返りのはなはだしい漆面に350・700・1400ルクスをそれぞれ20分照射したところ、700ルクスでそり返りが観測された、と書かれている。
この論文が優れているのは、測り方まで書いてあることだ。被写体と同じ照度になる位置に黒い物体を置き、サーミスター温度計でその温度上昇を測る。黒はほとんどの光を吸収するので、同じ光の中に置かれたものの中では最も温度が上がりやすい部類に入る。だから黒体の上昇が1.5℃以内なら、被写体はおおむねそれ以下に収まっていると見てよい。
ただし、これは厳密な保証ではない。温度の上がり方を決めるのは吸収率だけではなく、熱容量や熱の逃げやすさも効く。「最も条件の悪い吸収体を横に置いて確かめる」という考え方であって、被写体そのものの温度を測ったことにはならない。安全側に倒すための、単純な代用法である。
正直に言えば、最初は「半世紀前の、日本のローカルな工夫」だと思った。館に示すには古すぎるかもしれない、と。ところが、まったく同じ手法が現行の国際的な指針に載っていた。カナダ保存研究所(CCI)の Stefan Michalski による「Agent of Deterioration: Light, Ultraviolet and Infrared」(2011)である8。
To make a simple instrument for measuring the heating potential of IR from a light source, paint the bulb of an ordinary outdoor glass thermometer with a matte black paint. Place the bulb in the light beam near the object and wait until the temperature stops rising (several minutes).
Canadian Conservation Institute, Michalski (2011) 8
ガラス温度計の球部をつや消しの黒で塗り、対象の近くの光束の中に置き、温度の上昇が止まるまで数分待つ。1969年の登石・石川と本質的に同一の手法であり、「温度上昇が止まるまで待つ」という判定の考え方まで一致している。
これで、1969年の文献を引くことの弱さが消えた。古い権威を持ち出しているのではなく、いまも国際的に通用する標準的手法を、日本語の一次資料で説明できるということになる。
同じCCIの文書には、そもそも赤外線による加熱がどういうときに問題になるのかも明示されていた。
IR heating usually becomes a problem only with two sources of light: incandescent lamps at high intensity, over 5000 lux, and direct sunlight.
Canadian Conservation Institute, Michalski (2011) 8
問題になるのは「5000ルクスを超える高強度の白熱灯」と「直射日光」の二つ。この二つは表面を周囲より40℃以上暖めることがあるという。LEDもストロボも、どちらにも該当しない。そして登石の700ルクスはこの5000ルクスよりはるかに低い。二つの文献は矛盾しておらず、700ルクスは十分に安全側の値であると整理できる。
ではこの熱が、実際に何を起こすのか。CCIは別ページ「Incorrect temperature」で、具体的な被害まで記録している8。
The wide split in a rare First Nations saddle placed on display in the Museum of Man (Ottawa) during the 1970s was almost certainly the result of not only low winter RH in the building, but also of even lower RH in the case caused by lamp heating.
Canadian Conservation Institute, Michalski「Incorrect temperature」 8
ランプの熱で展示ケース内の相対湿度が下がり、先住民のサドルに大きな亀裂が入った。1970年代、オタワの博物館での話である。
登石が1969年に書いた筋道——表面温度の上昇 → 表面近くの相対湿度の低下 → 乾燥収縮——が、実際の被害として記録に残っている。理屈の上だけの話ではない。
同じページには序列も書かれている。最大の熱源は直射日光で、暗色で断熱性のある表面は周囲の気温より40℃高くなりうる。そして白熱灯は、日光よりも光に対する赤外線の比が高い。展示ケース内の過剰な白熱灯は、直射日光に次いで、館内で極端な温度変動を起こす最も一般的な原因だという。
⚠️ ここでも扱われているのは展示照明である。撮影用の光源は出てこない。だが「ケースの中でランプが熱を出すと、湿度が下がって物が割れる」という因果は、光源が何であっても変わらない。
1969年に、理論から予測されていたこと
この論文には、もうひとつ驚く箇所がある。相反則が成立するかどうかを、理論の側から検討しているのだ。
光量子一個が一個の材質変化を与えるのならば、全変化量は光量 It(I は明るさ、t は時間)に比例するであろう。しかし光量子二個が与かるなら I²t に比例する項が加わり、三個なら I³t に比例する項も入ってくる筈である。(中略)しかしこの際も材質変化の大部分を定めるのは It に比例する項である
登石健三・石川陸郎(1969)p.40 7
I が照度、t が時間である。光子1個で1つの変化が起きるなら、傷みの総量は It——つまり累積露光量に比例する。だが光子2個が関わる過程があれば I²t の項が、3個なら I³t の項が加わる。ここが効いてくる。I の次数が上がるほど、「強い光を短時間」と「弱い光を長時間」が同じでなくなる。同じ It でも、I が大きいほど I²t の寄与が増えるからだ。相反則が崩れるとしたら、この方向である。
二光子効果が働く可能性を考慮したうえで、それでも変化の大部分は「照度 × 時間」で決まる、と書いている。これは次章で見るSaundersが1994年に実験で確認する結論と、同じものだ。25年早く、理論から予測されていたことになる。
これでこの論文を引く理由が変わった。単に古い権威を持ち出すのではない。二光子効果を考慮したうえで積算露光量で並べてよい、と日本語で書いてある一次資料として引ける。
⚠️ 二つの文献の換算値は約60倍食い違う。併記してはいけない
登石はストロボ(GN33)を1.5mから1回焚くことを「300ルクスの写真電球60秒相当」と換算している7。一方Saundersは、GN20を2.5mから1回で「展示照明1秒分」とする9。約60倍の開きがある。
原因は測定精度ではなく、安全側への丸め方だ。登石は最も光に弱い材料の damage 曲線を全材質に外挿し、さらに8倍を10倍に丸めている。どちらも間違ってはいないが、並べて書けば読み手は必ず混乱する。
だから使い分けを先に決めておく。褪色の数値はSaunders一本。登石は熱の基準と、論点の提示に使う。どの文献をどこに使うかを決めておくことも、資料づくりの一部だ。
フラッシュは危険ではない — 直感が逆になる
次は褪色である。ここには決定版と言える実験がある。David Saunders, "Photographic Flash: Threat or Nuisance?" National Gallery Technical Bulletin Vol.16, 1995, pp.66-729。ロンドン・ナショナルギャラリーが1994年に実施した実験の報告だ。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 試料 | 水彩顔料25種 + ブルーウール標準 1〜3 |
| 機材 | Metz Mecablitz 45 CT-1、メーカー提供のUVフィルタを装着 |
| 1発光あたり / 発光間隔 | 650 lux·s / 7秒(コンデンサの再充電に十分な間隔として設定) |
| 総発光回数 | 350万回 |
| 累積露光量 | 200 および 350 klux·h |
| 対照群 | 約80ルクスの部屋、および約200ルクスの部屋 |
結果はこうだ。同じ累積露光量であれば、フラッシュを350万回浴びせても、ギャラリーの照明を浴び続けても、褪色の程度は同等だった。つまりこの光量の水準では、相反則(照度 × 時間で評価してよいという関係)が成立する。
これは実務的に大きい。「短時間に強い光を当てる方式を、積算露光量で評価してよいのか」という問いは自明ではなかった。二光子効果による非線形の損傷が起きうるという懸念があったからだ。Saundersはまさにそれを狙い撃ちで検証し、この条件では観測されなかったと結論している。
ただし条件がある。UVフィルタを外すと、大多数の顔料で損傷が10〜15%増加した。「フラッシュか定常光か」ではなく「紫外線をカットしているかどうか」が効く変数だった。機材メーカーに問い合わせるとき、最初に確認すべきはここである。
そして、その「効く変数」の実態を測った人がいる。Neevel(1994)が、欧州の商業写真家が使うフラッシュガンの紫外線出力を実測した25。結果はこうだ。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| フラッシュガンの紫外線出力 | 91〜720 µW/lm |
| 保存分野の目安 | 75 µW/lm 未満 |
| 判定 | 試験したどのランプも、目安を満たさなかった |
| 50ルクス1時間分の紫外線に相当する発光回数 | 9回 〜 400回超 |
「フラッシュは安全」と言えるのは、UVを切ってある場合の話である。切っていない機材は、9回光らせただけで展示照明1時間分の紫外線を与えうる。ここまで幅があるということは、機材ごとに確認する以外にないということでもある。
そして——ここからが本題だ。同じ問いに対して、二人の専門家の見積もりが40倍食い違った。
Michalski, assuming that the ultraviolet output of the flashlamps could be neglected, approximated that 225 flashes from two professional flashlamps would be required to deliver the equivalent of one additional hour of light exposure… This is more than forty times Neevel's estimate. The discrepancy in this example is due to Michalski's decision to assume that the ultraviolet output of the lamps could be ignored, and not to the use of different acceptable exposure increases, different gallery lighting levels, or arithmetic errors.
Schaeffer (2001) p.29 12
計算間違いではない。基準の違いでもない。「紫外線を無視してよいことにするかどうか」という、たった一つの仮定の差である。
登石とSaundersの換算が60倍食い違っていた話を先に書いた。同じことが、こちらでも起きている。そして今回は、Schaefferが原因まで特定してくれている。数値を人に示すときは、その数値がどんな仮定の上に乗っているかまで書く。それをしないと、40倍違う数字が同じ顔をして並ぶ。
同じ論文には、ナショナルギャラリーが実務で課している数値も書かれている。
the National Gallery's rules for professional photographers permit the use of flash up to a limit of 1250 lux.s per exposure (equivalent to f 22 at 100ASA) and stipulate that an ultra-violet filter must be used.
Saunders (1995) pp.66-72 9
1回の露光あたり1250 lux·s まで、UVフィルタは必須。世界有数の美術館が実際に運用している数値である。そして次の一文で、私の直感はひっくり返った。
flash ... is encouraged for professionals, since it invariably requires a lower total light exposure. The main reason for this is that the powerful tungsten halogen or discharge lamps used for photography are switched on while light levels are measured and between 'exposures'. The flash unit, on the other hand, emits light only while the shutter is open; there is no 'wasted light'.
Saunders (1995) pp.66-72 9
フラッシュは、プロの撮影においてはむしろ推奨されている。総露光量が少なくて済むからだ。定常光は測光している間も、撮影と撮影の合間も点きっぱなしになる。そのあいだ作品は光を浴び続けているが、そのぶんは一枚の画像にもなっていない。“無駄な光”である。
これは3D計測に、より深刻に当てはまる。スキャンやフォトグラメトリの現場では、実際に露光している時間より、セットアップ、位置合わせ、ターンテーブルの調整、試し撮りの確認に費やす時間のほうが圧倒的に長い。定常光を点けたまま段取りをしていれば、総露光量は本番ではなく段取り中に積み上がっていく。
そして、その対策には費用も手間もかからない。計測の合間は光源を消す。それだけで総露光量は大きく下がる。運用として約束でき、しかも実行できる、数少ない具体策のひとつだ。
走査する装置は、桁が違う
この「無駄な光」を、装置ごとの数値で示した資料がある。Mike Ware "On the Illumination of Light-Sensitive Photographs"、Topics in Photographic Preservation Vol.13、2009、pp.221-23317。光に弱い写真を複写・調査するときの照明を扱った13頁の論考で、複写方式ごとの露光量が一覧になっている。
| 複写の方式 | 1回あたりの露光量 |
|---|---|
| 35mmカメラ + フラッシュ | 0.3 klx·s |
| 120ロールフィルム + フラッシュ | 0.4 klx·s |
| 4×5スタジオカメラ + フラッシュ | 0.5 klx·s |
| 35mmカメラ(定常光・タングステン) | 1.8 klx·s |
| 4×5スタジオカメラ(定常光) | 18 klx·s |
| フラットベッドスキャナ | 3.6〜54 klx·s |
| 走査型CCDカメラ(2 klx × 15分) | 1,500 klx·s |
| 参考:展示(50ルクス・10時間/日) | 1,800 klx·s / 日 |
フラッシュで一枚撮るのと、15分かけて走査するのとでは、露光量が3,000倍以上ちがう。そして走査1回の露光量は、その作品を展示室に丸一日出しておくのとほぼ同じところまで来ている。
⚠️ ここは正確に書かなければならない。この「走査型CCDカメラ」は複写用のスキャニングバックであって、3Dスキャナではない。別の装置である。この表から言えるのは「一瞬で写し取る方式と、時間をかけて走査する方式とでは桁が変わる」という原理までだ。3D計測の数値は、この表にも無い。
Wareは段取りの光についても数字を出している17。50ルクスという低い照度でも、1分間の段取りで3 klx·s。フラッシュ複写の0.3〜0.5 klx·sと並べれば、段取り1分のほうが本番の6倍から10倍多い。Ware自身の書き方も控えめで、「場合によっては撮影本番の露光量を上回る」となっている。
そして対策が書いてある。
the operating protocols for copying should minimize unnecessary additional exposure of this kind, either by using very low level modeling lights, or preferably by setting-up on a 'dummy' or surrogate object of the same size, and only substituting the precious object at the last moment when ready.
Ware (2009) pp.221-233 17
段取りは同じ大きさのダミーで済ませ、本物は準備が整った最後の瞬間に入れ替える。費用はかからない。すぐできる。「合間は消す」と組み合わせれば、総露光量の大半を占める部分を、本番の画質に一切触れずに削れる。
⚠️ もうひとつ、この表には書き添えられていることがある。シアノタイプの行に "NB non-reciprocity"——相反則が成り立たない、という注記だ。本文でも相反則については「銀画像についてはおおむね成り立つ」と条件を付けている。相反則を無条件の法則として持ち出してはいけないという判断は、ここでも裏づけられる。
そして日本語にも、これをはっきり書いた文献があった。先の佐野千絵(2023)である21。
100 lx で5時間照射した場合の損傷は、500 lx で1時間照射した場合と損傷程度は同じであるという意味で使われているが、光化学反応原理を考えると厳密には成立しない。資料密度に対して照射強度が大きい場合、反応には寄与しない光が増え、また資料密度が高すぎる固体系では均質に光が当たらないため、反応に関与する分子と光量の線形性が保証されないからである。
佐野千絵 (2023) 21
「照度 × 時間」で並べてよいという前提そのものが、原理の側からは成り立たない——保存科学の当事者が、日本語で、そう書いている。強い光を短時間当てるほど、この前提から外れていく。そして撮影と3D計測でやっているのは、まさにそれだ。
⚠️ 誤解のないように書くと、これは相反則が使えないという話ではない。佐野自身、続けて「計測の容易な積算照度は有効と考えられる」と結んでいる。実務の道具としては有効で、原理としては近似である。その区別を持たずに「相反則が成立するので安全です」と言うと、原理を知っている相手の前で崩れる。
ナショナルギャラリーは、規則そのものを公開している
ここまで1995年の論文を通して同館の運用に触れてきたが、ナショナルギャラリーは撮影用照明の規則そのものをPDFで公開している。「Guidelines for Lighting for Photography and Television」、Scientific Department、2010年3月10。A4で2枚しかない。
| 光源 | 上限 | 特に光に弱いもの(水彩・紙) |
|---|---|---|
| タングステン白熱灯 / ハロゲン | 1000ルクス(100ASAでf4・1/60秒相当) | 250ルクス |
| HMI / 蛍光灯 / LED | 2500ルクス——「これらは白熱灯より発熱が少ないため」 | 500ルクス |
| 電子フラッシュ | 1250 lux·s / 1フレーム(100ASAでf22相当) | — |
この2枚から、いくつも読み取れる。
①光源の種類で上限を変えており、その理由が熱だと明記されている。LEDが白熱灯の2.5倍まで許されるのは、光化学的に安全だからではなく発熱が少ないからだ。論点が熱にあることを、世界有数の美術館が数値の形で示している。
②「合間は消す」が、すでに条文になっていた。私がコストゼロの具体策として挙げた運用は、思いつきではなかった。
the lighting should only be at the above intensities whilst photography or filming are in progress, or while the lights are being aimed. At all other times the photographic lights must be switched off or reduced significantly, below 250 lux for most paintings and below 50 lux for particularly sensitive object
National Gallery, Guidelines for Lighting for Photography and Television (2010) 10
③UVフィルタの指定が具体的だ。「素通しのガラスフィルタは不可。320〜400nmの紫外線を吸収しないため」とし、耐熱ガラスの製品名まで挙げている。「UVカットしています」では足りず、何をどう遮るのかまで書けということだ。
⚠️ ただしこの規則は絵画を対象としている。そのまま他の材質へ持っていくことはできない。使えるのは数値そのものより、光源の種類ごとに上限を変え、待機中の消灯まで条文化するという「規則の作り方」のほうだ。
ここは注意して書かなければならない点もある。Saunders自身が、条件付きであることを明記している。1970年にJ.F. Hanlanが行った実験11で使われたフラッシュは約48,500 lux·s——Saundersが使ったものの75倍の光量で、その強度では二光子的な劣化が起きていた可能性がある、と本人が書いている(⚠️Hanlanの数値はSaundersの記述による。原典は未取得)。結論は「調べた着色料については相反則に従う」であって、無条件ではない。だから「相反則が成立するので安全です」と言い切ってはいけない。「この光量の水準では成立する」と述べ、実際に使う機材の光量を 650 lux·s / 1250 lux·s という具体的な水準と並べて示す。それが正確な言い方になる。
「どこまでなら成立するのか」には、答えが出ていた
ではその境目はどこか。ここに答えを与えている文献があった。ゲッティ保存研究所が2001年に出した全221頁のレビュー、Terry T. Schaeffer『Effects of Light on Materials in Collections: Data on Photoflash and Related Sources』である。写真用フラッシュの影響だけを扱った一冊だ。
Occasionally, someone raises the question of whether biphotonic processes might occur in art objects during flash photography... Biphotonic processes have been studied using powerful laser light sources that can be focused onto very small sample areas. Their occurrence is extremely unlikely during flash photography.
Schaeffer (2001) p.12 12
Schaefferは概算まで示す。励起状態の寿命を長めに見積もっても、2個目の光子が励起中の分子に当たる確率は10億分の1程度。そのうえで、成立条件をこう書いている。
two-photon processes are of no concern unless the flash of light delivers roughly as many (or more) photons as there are molecules per unit area of object and does so in a very short time.
Schaeffer (2001) p.12 12
これは「危ないか否か」ではなく、判定できる条件式になっている。単位面積あたりの分子数に匹敵する光子を、極めて短い時間に叩き込めるかどうか。通常のフラッシュはそこに届かない。
⚠️ そして、届きうる光源も名指しされている。「微小な面積に集光できる強力なレーザー光源」——二光子過程が研究されてきたのは、まさにそれを使ってのことだ、と書いてある。
細い線に絞ったレーザーを走査する方式が、なぜ面で投影する方式と同じに扱えないのか。その理由が、ここで初めて照度が高いからという感覚ではなく、光子数と時間という条件の形で言えるようになる。
⚠️ ただし、SaundersとSchaefferは食い違っている
気づいた方もいると思う。同じ現象について、二人は反対を向いている。
Saunders(1995)は、Hanlanの75倍の光量について「二光子劣化が起きた可能性がある」と推測した。Schaeffer(2001)は、フラッシュ撮影中の二光子過程を「極めて起こりにくい」とし、概算で10億分の1と見積もっている。
どちらが正しいかを決める材料は、こちらにはない。言えるのは、Saundersのほうは可能性の指摘であり、Schaefferのほうは概算に基づく否定で、しかも6年後の、フラッシュの影響だけを扱ったレビューの中での判断だということまでだ。
そして幸いなことに、この対立は実務の結論を変えない。どちらの立場に立っても「通常のフラッシュは安全側にある」「集光したレーザーは別枠で考える」という帰結は同じになる。食い違いは隠さず、結論が変わらないことまで書く。それが誠実で、かつ強い。
「フラッシュ禁止」の貼り紙は、別の話をしている
ここで、先ほどの奈良文化財研究所のページに戻る。同じページにはこう書かれている。
平城宮跡資料館内で撮影される場合は三脚及びフラッシュは使用しないでください
奈良文化財研究所「特別観覧について」 6
これを見つけたとき、私はこれを重いリスクだと考えた。だが読み違えていた。
これは展示室内で、一般の来館者と同じ空間で撮影する場面を想定した運用ルールだ。三脚が通路を塞ぐ、展示ケースにぶつかる、フラッシュが他の来館者の妨げになる——理由はそうしたものである。閉館後に一点を専用で撮影する場面では、これらの理由は消える。
そして決定的なのは、一般来館者へのフラッシュ禁止と、プロによる記録撮影は、そもそも別の話だという点だ。ナショナルギャラリーは前者を制限しながら、後者にはフラッシュを推奨している。同じ館の中で、矛盾なく両立している。
掲示の文言を規範として読むと、判断を誤る。何のための決まりかを読む必要がある。
二次資料の数値を、そのまま人に見せる資料に書かない
この論文の内容を紹介した二次資料がある。Martin H. Evans「Assessing the harm done by flash photography of amateur photographers」(Expotime! 2013年秋号 pp.10-16)13で、私が最初に読んだのはそちらだった。原典を取り寄せて突き合わせたところ、二箇所が違っていた。「100万回以上のフラッシュ」→ 原典は "three and a half million 'flashes'" = 350万回。「200ルクスの展示照明と比較」→ 原典は約80ルクスと約200ルクスの2条件で、80ルクスのほうが抜けていた。
どちらも結論は覆さない。だが学芸員に渡す資料に「100万回」と書いて、相手が原典を持っていたら、その時点で資料全体の信用が落ちる。数字を人に見せるなら、原典を取る。なお、この原典は当初「サイトに弾かれるので手に入らない」と判断していた。実際には公開されていて、こちらの取りに行き方が悪かっただけだった。「入手できない資料」だと思っていたものが、最初から誰でも読める場所にあった——このての取り違えは、思っているより起きる。
それでも、空白がある
ここまでで、かなりのことが分かった。制度上の障害はない。判断の枠組みもある。熱には1.5℃という基準があり、測り方も確立している。褪色は350万回の実験で決着している。
だが、ひとつだけ埋まらないものが残った。
撮影や3D計測の光によって、作品の表面温度が実際に何度上がるのか。それを実測した一次研究が、ほとんど見当たらなかった。
⚠️ 「まったく無い」ではなかった — 一件、見つかった
この稿を書き進めるなかで、Schaeffer(2001)の本文にこういう一行を見つけた。「Sancho-Arroyo と Rioux は、写真用フラッシュランプの加熱効果についての調査から、閃光そのものの影響は無視できると結論した」12。原典は Sancho-Arroyo, M. & Rioux, J.-P.「L'utilisation au musée des équipements à éclairs électroniques」Technè n°4, pp.128-136, 1996(フランス、C2RMF)26。
フラッシュの加熱を調べた研究は、存在する。当初この稿には「実測した一次研究は国内外を問わず見つからなかった」と書いていた。言い過ぎだったので直した。
⚠️ ただし、こちらが確認できたのは Schaeffer による一行の紹介だけである。何をどう測ったのか、対象は何だったのか、原典を見ていないので分からない。フランス語・1996年・未入手。そしてこれはフラッシュの話であって、連続光や走査については、やはり見当たらない。だから本稿の立場はこうなる——「まったく無い」ではなく「フラッシュについては30年前の文献が一本あり、連続光と3D計測については見つからない」。
| 褪色 | 熱 | |
|---|---|---|
| 単発のフラッシュ | Saunders(1995)で実証済み9 | 登石7「時間が極めて短いので目立った被害がおこるとは考えられない」 |
| 連続発光(7秒間隔・350万回) | Saunders(1995)で実証済み9 | 該当なし |
| 高速で連射する方式 | 累積で評価してよいと推定 | 該当なし |
| 連続光(スキャナの計測光) | 累積で評価 | 登石(1969)。1.5℃ / 700ルクス7 |
Saundersは褪色しか測っていない。「21±2℃の空調室で実施した」と環境条件が書かれているだけで、試料表面の温度上昇への言及はない。登石が熱を論じているのは白熱電球の連続光についてであって、ストロボは褪色の観点でしか扱っていない。複数の経路で独立に調べたが、すべて同じ空白に到達した。保存科学分野の抄録データベースであるAATA Online(ゲッティ保存研究所、約16万件)でも、「structured light scanner conservation safety」「surface temperature rise illumination artifact」はいずれも0件だった。
そして決定的だったのは、探すまでもなく、そう書いてある文献があったことだ。先ほどのSchaeffer(2001)——写真用フラッシュの影響だけを221頁かけて調べ上げたレビューが、こう述べている。
Reports of other investigations that specifically compare the effects of photoflash or reprographic light exposure to display lighting exposure were not located. Also absent from the literature are evaluations of the possible deleterious effects of photoflash and reprographic light exposure as an integral component of risk assessment for collections.
Schaeffer (2001) 12
その文献を見つけるのが仕事だったレビューが、「見つからなかった」と書いている。私が探して無かったのとは、重みが違う。
もうひとつ、時代を下った例も見ておきたい。2019年、スペインの José M. Pereira Uzal が「美術品のデジタル化に用いるフラッシュヘッドの放射測定」という論文を発表している14。まさに本稿の主題そのもので、実機を使い、方法と結果を丁寧に示している。結論も「UVを適切にフィルタした電子フラッシュが作品に明白な損害を与えるという論拠を見つけるのは難しい」と、こちらに有利なものだ。
ただ、測っているのは放射照度・照度・紫外線量・分光——すべて光源の側である。本文で「温度」という語が出てくるのは3箇所だけで、いずれも「色温度」の話だった。作品の表面温度は、測られていない。
2019年に、デジタル化用のフラッシュを正面から扱った論文でさえ、そうなのだ。
「調べても見つからなかった」で終わるのは、あまり良い報告ではない。探し方が悪かっただけかもしれないからだ。ところが、先ほどのCCIの文書に、その空白が存在する理由そのものが書いてあった。
There are no museum conventions or common instruments for measuring IR because it is not nearly as important as UV or light to collection damage.
Canadian Conservation Institute, Michalski (2011) 8
赤外線を測定するための博物館の慣行も、一般的な計測器も存在しない。なぜなら、収蔵品の損傷に対して紫外線や可視光ほど重要ではないから——国際的な標準文書がそう明言している。
これで空白の性質が変わった。誰も気づいていない盲点ではなく、リスクの序列が確立していて、赤外線がその下位にあるがゆえの空白である。「未知のリスクを放置している」という話ではない、と説明できるようになった。
熱は、検証されずに仮定されている
Schaeffer の221頁を、今度は熱の観点で読み直した。もう一つ出てきた。近赤外光による紙の黄変を扱った研究を紹介したあと、こう続けている。
The extension of these results to photoflash phenomena has not been undertaken because it is assumed that flash exposures of objects in collections are conducted under conditions that avoid heating of the objects.
Schaeffer (2001) p.136 12
「加熱しない条件で行われていると仮定されているので、拡張は行われていない」。
検証したのではない。仮定したのだ。そしてその仮定を置いたまま、以降の議論が組み立てられている。空白の正体が、ここで一段はっきりする。誰かが調べて「問題ない」と結論したのではなく、調べる必要がないことになっている。
25年前の宿題が、そのまま残っている
同じ本の最終章に、今後の研究課題が並んでいる。その一つがこれだ。
Research by Neevel (1994) on the irradiances of flashguns and photocopier light sources need to be extended to light sources used in contemporary photocopiers, scanners, and digital imaging procedures… This work should be ongoing; new sources should be characterized as they come into use.
Schaeffer (2001) 12
スキャナとデジタル撮影の光源まで拡張せよ、と2001年に書かれている。そして「新しい光源が使われるようになったら、そのつど特性を明らかにすべきだ」とも。
25年が経った。その間に構造化光スキャナが普及し、青色レーザーが普及し、フォトグラメトリが誰にでも手の届くものになった。宿題は、出されたまま残っている。
穴が空いている場所が、特定できた
ここまでで、空白の位置がはっきりした。誰も怠けていない。担当が決まっていないのだ。
保存科学の側を見る。先に引いた佐野千絵(2023)は、日本の文化財照明研究を総括した論文である21。そこに「撮影」という語は一度も出てこない。扱っているのは展示照明である。
では3D計測の側はどうか。2025年に、フランス国立考古学博物館の資料を対象として、3Dデジタル化の手法を比較検討した論文が出ている27。フォトグラメトリ、フォトメトリックステレオ、RTI——光の当て方そのものを主題にした論文で、タイトルにも「Light」と入っている。
その本文を検索した結果が、これである。
| 語 | 出現回数 |
|---|---|
| heat(熱) / temperature(温度) / thermal(熱の) | 0件 |
| damage(損傷) / risk(リスク) | 0件 |
| exposure(露光) / safe(安全) | 0件 |
| preservation / protection(保存・保護) | 0件 |
⚠️ 誤解のないように書くと、これは手抜きの論文ではない。著者は情報学研究所と考古学研究所の研究者で、内容は精緻である。そして接触のリスクには触れている——「型取りするには脆すぎる複合的な資料」という記述がある。
触ることの危険は書く。光を当てることの危険は、一語も書かない。
これが分野の実態である。
| 撮影・3D計測について | 熱・保存について | |
|---|---|---|
| 保存科学の側(佐野 2023) | 「撮影」0件 | 詳述 |
| 3D計測の側(2025年の方法論論文) | 詳述 | 「熱」0件 |
両方の分野が、それぞれの持ち場をきちんとやっている。そして、その間に落ちている。
私がやろうとしているのは、新しい発見ではない。両側から手が届いていない場所に、たまたま両方に足をかけている者が、巻尺を持って立ち入ることだ。
もうひとつの空白 — 青い光
ここまで書いてきて、自分の議論に穴があることに気づいた。
これまで扱ってきた光は、白い光である。登石が論じたのは白熱電球とストロボ、Saundersが実験したのは白色のフラッシュだった。
ところが、3D計測に使う光は、白いとは限らない。
構造化光スキャナには、450nm前後の青色LEDを光源に用いるものが多い。青が選ばれる理由は保存とは無関係で、室内の照明や自然光から離れた帯域なので外光の影響を切り分けやすいこと、そして波長が短いぶん細かいパターンを投影できることによる。レーザー式でも445nm前後の青が広く使われている。
そして青は可視光の短波長側にあり、光子1個あたりのエネルギーが大きい。可視域でさらに短いのは紫だが、実用の光源としては青がほぼ端であり、紫外線の隣にある帯域だ。
ここで「だから青は危ない」と続けたくなる。波長が短いほど損傷が大きい——長くそう理解されてきたし、紫外線が最も警戒されている理由もそこにある。
ところが、それも自明ではなかった。
Contrary to the expectation that lower wavelength photons induce more damage than higher wavelength ones, UV (394 nm), blue, and cyan light all lead to similar levels of discoloration of a pigment for the same level of radiant power.
Lunz et al., "Can LEDs help with art conservation?" Studies in Conservation 62(5), 2017 ——要旨より引用(本文は有料で未入手) 15
ゴッホが使った不安定な黄色(クロム酸鉛)について波長依存性を測ったところ、同じ放射パワーあたりでは、紫外線(394nm)も青もシアンも同程度の変色をもたらしたという報告である。
⚠️ 顔料1種の結果なので、これを一般法則として持ち出すこともできない。だが分野の主要誌に載っている以上、「短波長ほど危険」を確立した原則として振りかざすのも同じくらい危うい。
そして、この不確かさは論点をむしろ鋭くする。波長による効き方すら決着していない領域で、白色フラッシュで得られた実験結果を、青色の光源にそのまま持ってくることはできない。「青が危ない」のではなく、「青について答えが出ていない」のだ。
ここでSaundersの結論の適用条件を、もう一度読み直す必要がある。彼が確かめたのは「白色フラッシュから紫外線を取り除いた場合」である。青色の帯域を選択的に、しかも毎秒数十回の頻度で当て続けるという条件は、あの実験には含まれていない。
文化庁の要項も、LEDを免除してはいない。5(4)③にはこうある。
紫外線や赤外線の出ないLED照明等を使用する場合も、①の原則と同様に取り扱うこと。
文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」5(4)③ 1
そして保存科学の側も、LEDを安全な光源とは見ていない。佐野千絵(2023)は、この誤解を名指しで否定している21。
LED照明は、紫外線や赤外線が出ない資料保存に適した光源というイメージを持った方もいるかもしれない。…LED光源は蛍光ランプに比較して損傷係数は小さいが、CIE標準イルミナントA光源(白熱灯電球)に比較すると損傷係数は大きいことが報告されている。LED照明はその発光技術ゆえ損傷係数が大きくなるのは避けられない。
佐野千絵 (2023) 21
理由は青にある。佐野は、ある美術館の LED 照明を実測して400〜460nm の帯域に山があることを示し、この範囲が「青色励起白色LED光源の励起光の波長範囲」にあたると指摘している。白く見える LED の中身は、青いのだ。そしてこの帯域は、Harrison の相対損傷度曲線ではやや損傷度がある部分にかかる。
「UVもIRも出ないから安全」は、光源の宣伝文句としては通っても、保存科学の評価としては通らない。構造化光スキャナが青色LEDを使うという話は、この文脈に直接つながっている。
⚠️ 誤解のないように書いておくと、これは「青色光は危険だ」という主張ではない。そもそも可視光による損傷は、量あたりで見れば紫外線ほどではない。それに、光源として熱をほとんど出さないLEDは、熱の面では白熱灯よりはるかに扱いやすい。ロンドン・ナショナルギャラリーの現行ガイドラインも、発熱が少ないことを理由にLEDやHMIには白熱灯より高い照度を許している(前節の表)。
言いたいのはひとつだけで、Saundersの結論をそのまま持ってくるには、条件が一致していないということだ。「350万回の実験がありますから大丈夫です」と言うとき、その実験が白色光の話であったことは、こちらから述べておかなければならない。
仕様書に書いてあるのは、人間の安全である
混同されやすい点も書いておきたい。3Dスキャナの仕様書には、しばしばレーザー安全クラス(JIS C 6802、IEC 60825-1など)や光生物学的安全性(IEC 62471)の表記があり、「クラス1だから安全です」という説明を受けることもある。だがこの規格の目的は人体(目・皮膚)の保護であり、クラス分類は人体の被ばく限界に基づいている。照射される対象物の損傷を評価する規格ではない。「レーザーだから対象物に被害はない」という説明は、実測に基づく評価ではなく広告的な言明だ。この区別を自分から先に述べておくほうが、話は通りやすいと考えている。
これは抽象論ではない。私が使っている3Dスキャナの仕様表で、光源の安全に触れている欄は1行だけである18。
Laser Safety — Class I (eye safe)
Creality CR-Scan Raptor 製品マニュアル V1.1 / 製品データシート 18
括弧の中は "eye safe"、目の安全である。波長も、出力も、照射面での放射照度も書かれていない。マニュアル全10頁と公式データシートを通して、照射される対象物に何が起きるかについての記述は一行もない。
同社が公開しているEU適合宣言書を見ると、その理由がはっきりする19。適合が宣言されている規格は、次のとおりだ。
| 区分 | 規格 | 何を守るための規格か |
|---|---|---|
| Safety | IEC 60825-1:2014 / EN 60825-1:2014+A11:2021 | 人体(目・皮膚)の被ばく限界 |
| EMC | EN 55032 / EN 55035 / EN IEC 61000-3-2 / EN 61000-3-3 | 電磁両立性 |
| RoHS | 2011/65/EU・2015/863/EU | 有害物質の含有制限 |
| WEEE | 2012/19/EU | 廃棄とリサイクル |
| LVD | 2014/35/EU | 電気的安全 |
これで全部である。人体、電波、有害物質、廃棄、感電。照射される対象物についての規格は、一つも無い。「仕様書に書いてあるのは人間の安全である」というのは、比喩ではなかった。
さらにIEC 60825-1には免除規定があり、クラス1に分類された製品は、表示義務を含むそれ以降の要求から免除されるとされている20。規格が「人体に安全」と判定した時点で、それ以上は書かなくてよいことになる。波長も、出力も、放射照度も。安全と判定された光源ほど、情報が出てこなくなる。
⚠️ ただしこの免除規定は、まだ規格の原典で確認できていない。レーザー安全機器メーカーの解説に基づくものだ。裏が取れるまで、断定として人に示すつもりはない。
そして、これはこの1社に限った話ではなかった。他の主要メーカー3機種の公開仕様も確かめたが、いずれも同じだった28。光源の波長まで書いている機種もある。だが出力も、照射面での放射照度も、どこにも無い。光源の安全に触れた欄そのものが無い機種もあり、あっても「Laser class: 2M (eye safe)」の一行で、括弧の中はやはり目である。適合指令を並べたマニュアルも見たが、EMC・低電圧・RoHS・WEEEの4つで、やはり対象物の欄は無かった。価格帯も用途も違う4機種が、揃って同じ欄を持っていない。
そして、メーカーが冷たいわけでもないのだと思う。いま挙げた資料はどれも、誰でも読める形で公開されている。それでも対象物についての欄が無いのは、文化財向けの安全データが、そもそも測られていないからだ。持っているのは人体保護の規格適合証明であって、漆や顔料や紙に何が起きるかを測った試験ではない。無い資料は出しようがない。個社の姿勢ではなく、業界にその欄が無いということだ。
——と、いまは書ける。だが正直なところ、腹は立った。
光源の仕様を教えてほしいと、ある産業用計測機器のメーカーに問い合わせたことがある。データシートは送られてこなかった。技術的な質問への返事も、来なかった。相手にされなかったのだと、しばらく思っていた。
個人でやっていると判断されたときは、話の終わり方がさらに早い。
いまは、たぶんそうではないと思っている。出し惜しみされたのではなく、そもそも持っていないのだ。それでも「無いなら無いと言ってほしかった」とは思う。無いと分かった時点で、自分で測る側に回れたからだ。待っていた時間だけが、まるごと消えた。
⚠️ もっとも、こちらの落ち度でもある。返事を待っていた項目のいくつかは、後で調べたら公開資料に最初から書いてあった。
それでも、ひとつだけ引っかかったままのことがある。
根拠は出せないのに、安全だという主張のほうは出ている。
3Dスキャンの紹介ページを開けば、どこも似たことを書いている。触れずに測れるから傷つける心配がない。壊れやすいものも安全にデータ化できる。従来の計測で起きていた破損を避けられる——。
どれも嘘ではない。だが、答えているのは「接触」の軸だけだ。触れないことは、触れることによる破損を防ぐ。そこは正しい。ところが非接触であることは、光を当てないことを意味しない。そしてこの記事がここまで扱ってきたのは、非接触にしても消えない唯一のリスク——光そのもの——である。
「非接触だから原物を傷めない」という言い方は、測った軸の言葉で、測っていない軸の安全まで言い換えてしまっている。意図的な誇張ではないと思う。接触が最大のリスクであることは事実だし、そこを解決したのは本当の進歩だ。だが、解決したのは接触であって、光ではない。
測り方にも限界がある
黒体を置いて温度を測るという方法が、1969年の日本にも、2011年の国際指針にも載っていることは先に見た。この稿も、最後はそこに乗るつもりでいる。だから、乗る前に限界を書いておきたい。3つある。
①局所のピークは平均化される。黒体は数センチの大きさを持ち、その範囲の熱を均してしまう。面でパターンを投影する方式なら、黒体の置かれた位置は被写体の受ける光を代表しているので問題ない。だが細い線状のレーザーを走査する方式では、線が当たった一点の照度は桁違いに高い。黒体はその瞬間のピークを写し取れない。方式によって、この測定がどこまで代表性を持つかは変わる。
②単発の閃光には追従しない。黒体には熱容量があり、温度が上がるまでに時間がかかる。CCIの手順が「温度の上昇が止まるまで数分待つ」としているのはそのためだ。ミリ秒で終わる単発のストロボの影響を、この方法では捉えられない。向いているのは、連続照射や高頻度の発光によって蓄積した熱を見ることである。裏を返せば、いま最も知りたい「連射で熱が溜まるか」には、ちょうど適した道具だということでもある。
③表面近傍の湿度は、測れない。登石が論じた損傷の筋道は、表面温度の上昇 → 表面ごく近くの薄い空気層の相対湿度の低下 → 乾燥収縮、というものだった。だがこの「表面ごく近くの相対湿度」を直接測る手立ては、現場にはない。実測できるのは室内の湿度と、表面の温度上昇までである。局所の湿度低下は、そこから空気線図で推定するしかない。「表面の湿度を管理します」と書いてはいけない。管理できるのは温度と室内湿度で、局所の湿度はその結果として推定される値だ。
専門機関が実際に手を打っているのは、光ではない
もうひとつ、方向を示す事実がある。
奈良文化財研究所は2025年2月28日、「虚像キャンセリング方法及びそれを用いた3Dモデル生成装置」(特許第7642264号)を登録している16。透明な設置台の上に資料を置いて撮影し、透明台の屈折によって生じる虚像を、基準マーカーから屈折パターンを逆算して画像処理で除去する技術である。
狙いは明快だ。同研究所の紹介記事は、対象を「脆弱な資料や固定できる置き方が限定されている資料など、置き方を変えることが出来ない資料」としている。資料をひっくり返さずに、底面まで含めて記録するための技術である。
ここに、この分野の優先順位がそのまま表れている。国の研究機関が特許を取ってまで解こうとしているのは、光の問題ではない。触ること、動かすこと、置き直すことの問題だ。
これはCCIが「赤外線の測定に慣行も計測器もないのは、それが紫外線や可視光ほど重要ではないからだ」と書いていたことと、同じ序列を別の角度から示している。光の安全を延々と説明するより、「触りません、動かしません」を技術で担保するほうが、本質的な回答に近い。
では、どうするか
国が数値を決めていない以上、こちらで立てて示すしかない。そして、立ててよい。ただし立て付けが重要だと思っている。「決まっていないから自由にやる」ではなく、「決まっていないので、国の研究機関が示した基準を自ら課す」。
そして基準を並べる前に、冒頭に戻っておきたい。いちばん確実で、いちばん安上がりな管理は、光を足さないことだ。受動的な方式なら、その場の照明で成立する場合がある。まず「足さずに要求品質に届くか」を試し、届かないぶんだけ足す——という順序で組めば、以下の数値はすべて上限ではなく余裕のある範囲になる。足す量を先に決めてから安全を論じるのは、順序が逆だ。
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 接触 | 完全非接触 | — |
| 被写体の表面温度上昇 | 1.5℃以内 | 登石・石川(1969)7。測定法はCCI(2011)8にも同一のものが載る |
| 照度(温度計が使えない場合の代用) | 700ルクス以下 | 同上。⚠️ナショナルギャラリーはLED光源に2500ルクスまで認めている10。意図的に3倍以上厳しい側に置いている |
| フラッシュ1回あたり | 1250 lux·s 以下、UVフィルタ必須 | ナショナルギャラリー2010ガイドライン(原文で確認)10 |
| 総露光量 | 「通常の展示照明◯日分に相当」と換算して提示する | Saunders(1995)9の枠組み |
| 相対湿度 / 慣らし | おおむね50〜55%に収め急変を避ける / 24時間程度 | 登石(1969)7 / 文化庁要項 第5項(1)1 |
| 運用 | 計測の合間は光源を消す | ナショナルギャラリー2010ガイドライン(条文化されている)10 / Saunders「there is no 'wasted light'」9 |
| 記録 | 撮影中の表面温度を黒体で実測し、記録を所有者へ提出する | 登石(1969)7 / CCI(2011)8 |
この形にしておくと、ひとつ良いことがある。メーカーの回答に依存しない。「この機材はこういう仕様です」はメーカーの主張であり、相手が答えなければ手に入らないし、答えても自己申告だ。一方「どの機材であれ、この範囲に収めます」は約束であり、実測で担保できる。後者のほうが強い。
総露光量の欄については、Schaeffer が考え方の枠組みまで示している12。「その作品の展示寿命のうち、何パーセントを撮影に使ってよいことにするか」という立て方だ。Neevel と Michalski は10%を置いた。Schaeffer はそれを採らず、1%で計算している。
これは強力な考え方だと思う。「安全か危険か」ではなく、「その作品が生涯で浴びてよい光の、何分の一を、いま私が使わせてもらうか」という問いに変わるからだ。所有者にとっても判断しやすい。撮影は消費であり、その量を先に申告する——という形になる。
⚠️ ただし、この換算には展示寿命の推定が要る。材質ごとの光感受性が分からなければ計算できないし、そこは本稿の手に余る。いまの段階では「展示照明◯日分に相当します」まで示して、割合の判断は所有者に渡すのが正直なところだ。
そして、吉田直人の一文をここでもう一度置いておきたい24。基準を守れば劣化しないのではない。遅くなるだけである。だから上の表は「これを守れば安全です」という意味ではない。「この範囲に収め、どれだけ使ったかを記録して残します」という意味だ。
そして、基準は決めるだけでは足りない。超えたときにどうするかまで、先に書いておく。
| 事象 | 対応 |
|---|---|
| 黒体の温度上昇が1.5℃を超えた | 照射を中断して冷却する。発光間隔を延ばす |
| 撮影室の相対湿度が55%を超えた(結露・腐食)、または40%未満になった(割れ・剥離) | 空調・調湿で是正する |
| 腐食が進みやすくなる湿度(おおむね65%)に近づいた | 即時に除湿する |
撮影を止める条件を先に書いておくと、立ち会う担当者は判断を委ねやすくなる。「異常があれば止めます」では、何が異常かを決めるのが相手の仕事になってしまう。
⚠️ここでも、測れるものと推定するものを分けておく。直接測るのは黒体の温度上昇と室内の相対湿度の2つだけで、表面ごく近くの湿度低下はそこから推定する値だ。トリガーを推定値で書くと、現場で誰も判定できない。
「合間は消す」は、気をつけるだけでは守れない
ひとつ、自分で書いておきながら現実的でない項目がある。「計測の合間は光源を消す」だ。
実際の現場では、位置合わせ、ソフトウェアの調整、うまく取れなかった箇所のやり直しに追われる。そのたびに消灯を思い出せる人間はいない。加えて機材によっては、頻繁に電源を入り切りすると較正が狂う、あるいは光源が安定するまで待たされるという制約がある。消すこと自体にコストがあるなら、消さなくなる。
だから、これは心構えではなく工程の設計として書くべきものだ。段取りの時間と照射の時間をあらかじめ分けておく。照明の電源を計測系と別系統にして、手元で落とせるようにしておく。撮影者とは別に、記録と消灯を担当する人を立てる。
そしてもうひとつ、Wareのダミー入替がここに効く17。段取りのあいだ光を浴びているのがダミーなら、消し忘れても実害が出ない。人の注意力に頼らずに済む方法のほうが、約束として強い。
——このあたりが、資料に「配慮します」と書くのと、実際に守れる約束にするのとの境目になる。守れない約束を書くほうが、書かないより悪い。
最後にひとつ。この種の説明は、「絶対に安全とは申し上げられません」から始めるべきだと考えている。計測光による損傷を定量評価した国内の一次文献は、見つからなかった。「安全である」と断言できる直接のデータは存在しない。いま言えるのは、材料の光感受性と相反則の成立から演繹された、合理的な推定だ。Saunders自身が条件付きだと書いている以上、断言は誠実ではない。
そして実務的にも得策ではない。資料を読むのはこの分野の限界を知っている人であり、断言する業者は即座に見抜かれる。「メーカーが安全と言っています」で済ませる相手との差は、まさにここで出る。
そして、この結論は私だけのものではない。佐野千絵は、退色の予測について同じところに行き着いている21。
資料の多様性を考えると、正確に退色予測をするのは、Microfading のように実測する以外の方法はない
佐野千絵 (2023) 21
扱っている対象は違う——佐野が論じているのは展示照明による退色で、こちらが測ろうとしているのは撮影・計測光による温度上昇だ。だが構造は同じである。材料が多様で、光源の分光分布もまちまちで、計算では詰めきれない。だったら、その場で測るしかない。
文献上の空白は、弱点のように見える。だが見方は変えられる。誰も測っていないのなら、こちらで測って記録を残せばいい。黒体を置き、温度を測り、記録を所有者に提出する。それは受け身の弁明ではなく、空白を埋める側に回るという提案になる。
——文化財に光を当てることは、許されるのだろうか。
調べた結果、法令上の障害はなかった。判断の枠組みもあった。半世紀前の日本の測り方は、いまも国際的な指針の中で生きていた。
それでも、この問いに完全に答えられる人は、まだいない。
だから、測る。
参照した一次資料
- 1. 文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」平成8年7月12日 文化庁長官裁定 / 令和5年6月16日改訂
bunka.go.jp(PDF) ↩ - 2. 長谷川純子・村田昌也・大粟美菜・飯田恵実・植地岳彦「博物館資料に対する紫外線の影響」『徳島県立博物館研究報告』No.35, pp.153-172, 2025年3月31日
徳島県立博物館(PDF・全20頁) / 研究報告一覧 ↩ - 3. 文化庁「重要文化財の公開の許可について」(文化財保護法 第53条)
bunka.go.jp ↩ - 4. 文化庁「高松塚古墳壁画の保存活用検討会」ワーキンググループ(第2回)資料6-1 / 6-2、2016
資料6-1 / 資料6-2 ↩ - 5. 日本文化財科学会 声明文『文化財の科学調査に伴う手続きの重要性について』2019年(令和元年)6月24日、会長 泉拓良
声明文(PDF) / 掲載ページ ↩ - 6. 奈良文化財研究所「特別観覧について」
nabunken.go.jp ↩ - 7. 登石健三・石川陸郎「文化財撮影時の照明に対する安全についての考察」『保存科学』第5号 pp.35-48、東京国立文化財研究所、1969
東文研リポジトリ(本文PDF公開) / 『保存科学』全巻一覧 ↩ - 8. Stefan Michalski, "Agent of Deterioration: Light, Ultraviolet and Infrared", Canadian Conservation Institute (CCI)
canada.ca ↩ - 9. David Saunders, "Photographic Flash: Threat or Nuisance?" National Gallery Technical Bulletin Vol.16, 1995, pp.66-72
nationalgallery.org.uk(PDF) ↩ - 10. The National Gallery, "Guidelines for Lighting for Photography and Television", Scientific Department, March 2010
nationalgallery.org.uk(PDF・全2頁) ↩ - 11. J.F. Hanlan, "The effect of electronic photographic lamps on the materials of works of art", Museum News(American Association of Museums)v.48, n.10, 1970 Jun, pp.33-41 ——原典未取得。本稿の数値はSaunders(1995)の記述による ↩
- 12. Terry T. Schaeffer, Effects of Light on Materials in Collections: Data on Photoflash and Related Sources, The Getty Conservation Institute, 2001(全221頁)
getty.edu(PDF・全文無料公開) ↩ - 13. Martin H. Evans, "Assessing the harm done by flash photography of amateur photographers", Expotime! 2013 Autumn, pp.10-16 ↩
- 14. José M. Pereira Uzal「Caracterización radiométrica de una cabeza de flash para su uso en digitalización de obras de arte」revista PH(Instituto Andaluz del Patrimonio Histórico)n.96, pp.158-169, 2019
iaph.es(オープンアクセス) ↩ - 15. Manuela Lunz, Elise Talgorn, Jannie Baken, Wiebe Wagemans, Dirk Veldman, "Can LEDs help with art conservation? Impact of different light spectra on paint pigment degradation", Studies in Conservation v.62 n.5, pp.294-303, 2017(DOI: 10.1080/00393630.2016.1189997)——本文は有料で未入手。本稿の引用は要旨による ↩
- 16. 奈良文化財研究所「特許登録! 文化財のより安全で簡便な三次元計測を実現する技術を開発」(「虚像キャンセリング方法及びそれを用いた3Dモデル生成装置」特許第7642264号、令和7年2月28日登録)
nabunken.go.jp ↩ - 17. Mike Ware, "On the Illumination of Light-Sensitive Photographs", Topics in Photographic Preservation Vol.13, pp.221-233, Photographic Materials Group, American Institute for Conservation, 2009
culturalheritage.org(PDF・全13頁) ⚠️同誌は査読誌ではない旨が冒頭に明記されている ↩ - 18. Creality「CR-Scan Raptor Product Manual V1.1」(全10頁)および製品データシート
wiki.creality.com(マニュアル) / データシート(PDF) ↩ - 19. Creality「EU DECLARATION OF CONFORMITY — CR-Scan Raptor」(Model: CRS07R、2025年1月1日発行)
wiki.creality.com ↩ - 20. IEC 60825-1:2014『Safety of laser products — Part 1: Equipment classification and requirements』のクラス1免除規定 ——原典未取得。本稿の記述はレーザー安全機器メーカーによる解説に基づく ↩
- 21. 佐野千絵「文化財保護分野における照明研究の歴史」『マテリアルライフ学会誌』第35巻2号 pp.27-35、2023年5月
J-STAGE(PDF・全9頁) ↩ - 22. 吉澤望「美術館・博物館の照明技術指針について」『色彩学』第1巻3号 pp.144-147、日本色彩学会、2022
color-science.jp(PDF・全4頁) ↩ - 23. 一般社団法人照明学会『美術館・博物館の照明技術指針』JIEG-012:2021、および 国際照明委員会 CIE 157:2004「Control of Damage to Museum Objects by Optical Radiation」——いずれも原典未入手。本稿の記述は参考文献21・22による ↩
- 24. 吉田直人「白色LED照明の展示照明への普及」『文化財の虫菌害』第76号、公益財団法人 文化財虫菌害研究所、2018年12月
bunchuken.or.jp(PDF) ↩ - 25. J. G. Neevel, "Exposure of objects of art and science to light from electronic flash-guns and photocopiers", in Contributions of the Central Research Laboratory to the Field of Conservation and Restoration, eds. H. Verschoor and J. Mosk, pp.77-87, Amsterdam: Central Research Laboratory, 1994 ——原典未取得。本稿の数値はSchaeffer(2001)の記述による ↩
- 26. M. Sancho-Arroyo and J.-P. Rioux「L'utilisation au musée des équipements à éclairs électroniques」Technè n°4, pp.128-136, C2RMF, 1996 ——原典未取得。本稿の記述はSchaeffer(2001)による一行の紹介のみに基づく ↩
- 27. Antoine Laurent, Jean Mélou ほか「Light and 3D: a methodological exploration of digitisation techniques adapted to a selection of objects from the musée d'Archéologie nationale」arXiv:2506.04925, 2025(フランス語本文)
arXiv(PDF・全18頁) ↩ - 28. 他社3機種の公開仕様(いずれも2026年7月29日確認)。Artec 3D「Artec Spider II 技術仕様」(光源: 450 nm LED / White LED CRI>95・4000 K。出力・放射照度の記載なし)および「Artec Spider 2 User Manual Version 1.0」(適合指令は EMC 2014/30/EU・低電圧 2014/35/EU・RoHS 2011/65/EU・WEEE の4つのみ、安全の章は人身傷害と機器の損傷を扱う)/Creaform「HandySCAN 3D PRO Series Technical Specifications」("Laser class: 2M (eye safe)"。波長・出力・放射照度の記載なし)/SHINING 3D「EinScan HX2」製品ページ("Blue LED / 13 Blue Laser Crosses"。波長・安全クラス・出力いずれも記載なし)
artec3d.com(仕様) / Spider 2 マニュアル(PDF) / creaform3d.com / shining3d.com ↩
文献の探索には、ゲッティ保存研究所が運営する保存科学分野の抄録データベース AATA Online(約16万件・無料)を用い、光源・熱・撮影・3D計測に関する語で10通りの検索を行った。
本稿は特定の作品・所蔵機関を対象としたものではなく、公開されている一次資料の読解をまとめたものです。実際の撮影にあたっては、対象の材質・状態・所蔵機関の方針によって前提が変わります。とくに複数の材質が組み合わされた作品では、最も弱い材質に基準を合わせる必要があります。